会社や店舗で物品を管理するには、「実際にいくつ残っているのか」「管理表の数量と合っているのか」「誰がどこで使っているのか」を確認する必要があります。
そのために行う作業が 棚卸 です。
棚卸というと、店舗の商品在庫や倉庫の在庫を数える作業をイメージする方が多いかもしれませんが、商品だけでなく、社内備品、工具、機材、消耗品、リース品など、さまざまな物品が棚卸の対象になります。
この記事では、棚卸の意味や目的、基本的なやり方、効率化のポイントをわかりやすく解説します。
棚卸とは
棚卸とは、会社や店舗が保有している商品・材料・備品・消耗品などを実際に確認し、帳簿や管理表に記録されている数量・状態・保管場所と一致しているかを確認する作業です。
簡単にいうと、「管理上のデータ」と「実際に存在する物品」が合っているかを確認する作業 です。
たとえば、管理表ではノートPCが10台あることになっているのに、実際に確認すると9台しか見つからない場合があります。
また、管理表では倉庫Aに保管されていることになっている備品が、実際には別の拠点に移動していることもあります。
このようなズレを確認し、必要に応じて管理データを修正するのが棚卸です。
棚卸を行う目的
棚卸は、単に物品の数を数えるだけの作業ではありません。
正確な物品管理を行うために、さまざまな目的があります。
在庫数・保有数を正確に把握するため
棚卸の大きな目的は、現在保有している物品の数量を正確に把握することです。
商品在庫であれば、実際に販売できる数量を確認できます。
社内備品であれば、どの備品が何個あり、どこに保管されているかを確認できます。
管理表の情報が古いままだと、実際には在庫が不足しているのに気づかなかったり、反対に十分な数があるのに追加購入してしまったりする可能性があります。
定期的に棚卸を行うことで、現在の保有状況を正しく把握できます。
紛失・破損・使途不明を見つけるため
棚卸を行うことで、物品の紛失や破損、所在不明を発見しやすくなります。
たとえば、次のようなケースです。
- 管理表には存在するが、実物が見つからない
- 備品が壊れているのに、使用可能な状態として登録されている
- 貸出中のまま返却されていない
- 廃棄済みなのに管理表に残っている
- 保管場所が変更されているのに、記録が更新されていない
このような状態を放置すると、必要なときに物品を使えなかったり、余計な購入が発生したりします。
棚卸は、こうした管理上の問題を見つけるためにも重要です。
余剰在庫や不足を防ぐため
棚卸を行うと、物品が多すぎるのか、少なすぎるのかを判断しやすくなります。
在庫や消耗品が多すぎると、保管スペースを圧迫したり、古いものが使われないまま残ったりします。
一方で、必要な数量が不足していると、業務に支障が出ることがあります。
棚卸によって実際の数量を確認することで、無駄な購入や発注漏れを防ぎ、適切な数量を維持しやすくなります。
会計・決算のため
商品や原材料などの在庫は、会計や決算にも関係します。
決算時には、期末時点でどれだけの在庫を保有しているかを確認し、資産として評価する必要があります。
そのため、実際の在庫数と帳簿上の数量が大きくズレていると、正確な会計処理ができなくなる可能性があります。
会計上の在庫だけでなく、社内の備品や機材についても、管理状況を定期的に確認しておくことは、資産管理の面で重要です。
棚卸の対象になるもの
棚卸の対象は、業種や会社の運用によって異なります。
一般的には、次のようなものが対象になります。
商品在庫
小売店やECサイト、卸売業などでは、販売する商品が棚卸の対象になります。
実際に販売可能な数量を把握することで、欠品や過剰在庫を防ぎやすくなります。
原材料・部品
製造業では、製品を作るための原材料や部品も棚卸の対象になります。
部品が不足すると製造に影響が出るため、正確な数量管理が重要です。
消耗品
コピー用紙、文房具、梱包材、清掃用品、作業用手袋などの消耗品も棚卸の対象になります。
消耗品は単価が低いものも多いですが、管理があいまいになると、気づかないうちに過剰購入や不足が発生しやすくなります。
工具・機材
工具、測定器、撮影機材、検査機器なども棚卸の対象になります。
特に、複数の担当者や拠点で共有する機材は、所在がわからなくなりやすいため、定期的な確認が重要です。
PC・タブレット・スマートフォン
社内で利用するPC、タブレット、スマートフォンなどのIT機器も棚卸の対象になります。
誰に貸与しているか、どの部署で使っているか、返却済みか、故障していないかなどを確認します。
オフィス備品
机、椅子、モニター、プロジェクター、会議用機器などのオフィス備品も棚卸の対象になります。
利用頻度が低い備品でも、いざ必要なときに所在がわからないと業務に支障が出ることがあります。
リース品・貸出品
リース契約している機器や、社内外に貸し出している物品も棚卸の対象になります。
契約期間、返却予定日、利用者、保管場所などを確認しておくことで、返却漏れや契約更新漏れを防ぎやすくなります。
棚卸の基本的なやり方
棚卸の進め方は、管理対象や会社の規模によって異なりますが、基本的な流れは共通しています。
1. 棚卸対象を決める
まず、今回の棚卸で何を確認するのかを決めます。
すべての物品を一度に確認する方法もありますが、管理対象が多い場合は、拠点ごと、部署ごと、カテゴリごとに分けて実施する方法もあります。
たとえば、次のように対象を分けられます。
- 倉庫内の商品在庫
- オフィス内の備品
- 各社員に貸与しているPC
- 消耗品棚にある備品
- リース契約中の機器
対象範囲を明確にしておくことで、確認漏れを防ぎやすくなります。
2. 管理表や一覧を準備する
次に、棚卸対象の一覧を準備します。
Excelやスプレッドシートで管理している場合は、対象物品の一覧を出力します。
物品管理システムを利用している場合は、棚卸対象のリストを作成します。
一覧には、次のような項目があると便利です。
- 物品名
- 管理番号
- 数量
- 保管場所
- 利用者
- 状態
- 最終更新日
- 備考
事前に一覧を準備しておくことで、現場で確認すべき内容が明確になります。
3. 実物を確認する
準備した一覧をもとに、実際の物品を確認します。
商品や消耗品であれば数量を数えます。
備品や機材であれば、実物が存在するか、保管場所が合っているか、利用者が正しいかを確認します。
このとき、数量だけでなく、物品の状態も確認しておくと管理精度が上がります。
たとえば、以下のような状態を記録します。
- 使用可能
- 故障中
- 修理中
- 貸出中
- 廃棄予定
- 所在不明
単に「ある・ない」だけでなく、現在の状態まで確認することが大切です。
4. 数量・状態・保管場所を記録する
実物を確認したら、実際の数量や状態、保管場所を記録します。
このとき、紙に記入して後から入力する方法もありますが、記入ミスや入力漏れが発生しやすくなります。
タブレット等を使い、現地で確認しながら記録できる仕組みがあると、作業の負担を減らしやすくなります。
5. 管理表との差異を確認する
棚卸結果を記録したら、管理表やシステム上の情報と照合します。
たとえば、次のような差異がないか確認します。
- 数量が合わない
- 保管場所が違う
- 利用者が違う
- 状態が違う
- 管理表にはあるが実物がない
- 実物はあるが管理表に登録されていない
差異が見つかった場合は、そのまま修正するだけでなく、なぜ差異が発生したのかを確認することが重要です。
6. 差異の原因を調査する
棚卸で差異が見つかった場合は、原因を調査します。
よくある原因としては、次のようなものがあります。
- 入庫や購入時の登録漏れ
- 出庫や使用時の記録漏れ
- 貸出・返却の記録漏れ
- 拠点間や部署間の移動記録漏れ
- 廃棄処理の記録漏れ
- 棚卸時の数え間違い
- 実際の紛失や盗難
差異の原因を確認せずに管理表だけを修正すると、同じ問題が繰り返される可能性があります。
棚卸は、数量を合わせるだけでなく、管理ルールの問題点を見つける機会でもあります。
7. 管理データを修正する
最後に、棚卸結果に基づいて管理データを修正します。
数量、保管場所、状態、利用者などを最新の情報に更新します。
また、差異が発生した原因に応じて、運用ルールの見直しも行うと効果的です。
たとえば、貸出・返却の記録漏れが多い場合は、貸出時に必ずシステムへ登録するルールを徹底する必要があります。
消耗品の数量ズレが多い場合は、補充や使用時の記録方法を見直すとよいでしょう。
棚卸でよくある課題
棚卸は重要な作業ですが、実際には手間がかかりやすく、多くの企業で課題になりがちです。
物品がどこにあるかわからない
棚卸でよくあるのが、管理表には登録されているのに、実物がどこにあるかわからないケースです。
特に、複数の拠点や部署で物品を共有している場合、移動の記録が残っていないと所在確認に時間がかかります。
管理表の更新漏れがある
購入、廃棄、移動、貸出、返却などのタイミングで管理表が更新されていないと、実際の状態とデータがずれてしまいます。
更新漏れが多いと、棚卸のたびに大量の差異が発生し、確認作業に時間がかかります。
Excelファイルが複数あり、どれが最新かわからない
Excelで管理している場合、ファイルが複数作られてしまい、どれが最新かわからなくなることがあります。
担当者ごとに別ファイルで管理していたり、過去のファイルをコピーして使っていたりすると、正しい情報を確認するのが難しくなります。
担当者によって記録方法が違う
同じ物品でも、担当者によって名称や分類、状態の書き方が異なることがあります。
たとえば、「ノートPC」「PC」「パソコン」のように表記がバラバラだと、検索や集計がしにくくなります。
棚卸を効率よく行うには、入力ルールや管理項目を統一しておくことが大切です。
貸出中・修理中・廃棄済みのものが混在する
備品や機材の場合、すべてが保管場所にあるとは限りません。
貸出中、修理中、廃棄済み、別拠点へ移動済みなど、さまざまな状態の物品が混在します。
状態管理ができていないと、棚卸時に「見つからない」と判断してしまい、確認作業が複雑になります。
棚卸を効率化するポイント
棚卸を効率化するには、日頃の管理方法を整えておくことが重要です。
管理ルールを決める
まず、物品管理のルールを明確にしましょう。
たとえば、以下のようなルールです。
- 誰が物品を登録するのか
- 購入時にどの情報を記録するのか
- 貸出・返却時に何を入力するのか
- 廃棄時にどのような処理をするのか
- 棚卸はいつ、誰が行うのか
ルールがあいまいなままだと、担当者ごとに管理方法が変わり、棚卸時の確認作業が増えてしまいます。
保管場所を明確にする
物品の保管場所を明確にしておくことも重要です。
単に「倉庫」と記録するだけでなく、「本社倉庫」「2階備品棚」「大阪営業所」「A棚3段目」のように、必要に応じて細かく管理すると探しやすくなります。
保管場所が明確であれば、棚卸時に確認すべき場所もわかりやすくなります。
バーコード・QRコードを活用する
物品管理システムの中にはバーコードやQRコードを読み取って物品を認識できるものがあります。
こうした仕組みを導入することで、棚卸作業を効率化できます。
手入力を減らせるため、入力ミスの防止にもつながります。
貸出・返却・移動の履歴を残す
棚卸時に数量や所在が合わない原因の多くは、日々の移動や貸出・返却の記録漏れです。
誰がいつ借りたのか、いつ返却されたのか、どこからどこへ移動したのかを履歴として残しておくと、差異が発生したときに原因を追いやすくなります。
特に、社内で共有する備品や機材は、履歴管理が重要です。
物品管理システムを活用する
管理対象が増えてくると、Excelや紙での管理には限界が出てきます。
複数人で同時に管理したい場合や、貸出・返却、保管場所、状態、棚卸結果をまとめて管理したい場合は、物品管理システムの活用が有効です。
クラウド型の物品管理システムであれば、複数の担当者が同じデータを確認でき、更新漏れや情報の分散を防ぎやすくなります。
Excel管理と物品管理システムの違い
棚卸は、Excelや紙でも行うことができます。
管理対象が少ないうちは、Excelで十分な場合もあります。
ただし、物品数や利用者が増えてくると、Excel管理では次のような課題が出やすくなります。
| 管理方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| Excel・紙 | すぐに始められる。費用がかかりにくい。自由に項目を作れる。 | 更新漏れが起きやすい。複数人での共有が難しい。履歴管理や棚卸結果の集計に手間がかかる。 |
| 物品管理システム | 複数人で共有しやすい。貸出・返却・状態・保管場所・棚卸結果を管理しやすい。バーコードやQRコードを活用しやすい。 | 導入時に管理ルールの整理が必要。システム利用料がかかる場合がある。 |
Excelは手軽に始められる一方で、ファイルの管理や更新ルールを徹底しないと、情報が古くなりやすいという課題があります。
一方、物品管理システムは、物品情報を一元管理しやすく、棚卸や貸出管理、履歴確認などを効率化しやすい点がメリットです。
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